叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「へ、……な、なに笑ってんの」

「いや、はははっ、……やっぱあんた変だなと思って」

「なにそれ。人の顔みて笑うとか最低なんですけど」

「ごめんごめん……っあはは」


顔全体を覆うようにして笑う彼に心無い表情を向ける。


耳が真っ赤だし、笑い声が掠れててなんだか苦しそうで。


それに『変』ってなによ。
本当に思ったことを言葉にしただけなのに。そこは喜びなさいよ。それか……。



「ありがとう」

「え、」

「『それかありがとうくらい言えないの?』じゃなかった?」


や、やっぱ読むんだ人の心を。
そりゃそうだよね。幽体離脱できるわけだからそういう事も出来るってことだし……。


あれ?でも待って?


たしか……。


何か頭に引っかかって少し昔を遡る。
その様子を彼は不思議そうに見ているけれど、この違和感を解消することを優先に考え巡らせた。


そして、辿り着いた。この妙な違和感に。


あれは熱帯夜にちゃんと“彼”だと認識出来たあの日。


そして、その時も同じように私の心を読んでいた。

幽体離脱の私の解釈について。



『ごめん。聞くつもりはなかったんだけどこの状態の時は人の心まで読めるんだよね』


そう。彼はあの時、“あの状態”の時は人の心を読めるんだと言っていた。


なのに、今、この人……。

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