叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「あんたの事なんて知ったこっちゃないけど、いい加減『あんた』って言うの止めたら?」

「え、なに怒ってんの。……てかあんたも『あんた』言ってんじゃん」

「……」


しまった。本当だ。私もしっかり『あんた』言ってる……。


うはぁ。もー何やってんだろう私。


脱落としたその身を壁に預けると頭を思い切りぶつけて苦しげに声をあげた。


痛みが思った以上に酷くてクゥ〜と漏れたうめき声と共に身を前に倒す。
頭を押さえてそれと戦っていると、違う温もりが伝わった。


激痛がしている辺りとはほんの少しズレているけれど、じんわりと広がっていくように優しいあたたかさが心地いい。


そして胸の奥がじわりと疼きはじめる。


まただ。胸のあたりがものすごくくすぐったくなって、心做しか心拍数も上がっている気がする。


どうしよう。身体が起こせられない。
起こしたら顔見られちゃう……よね。
なんかおかしいくらい顔まで熱くなってるみたいなんだよね……私……。



「ねえすごい音したけど、本当に大丈夫?」

「え、あ、うん……っ大丈夫」

「ん」


……いや、いつまで撫で続けられるの?
今の確認はなに。


すっかり忘れてしまった感情を置いておもむろに身体を起こすとパタリとその動きは止んだ。

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