叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「あ、起きた」

「……っ、ね、寝てないよっ」

「いやそれは知ってるから……プフッ」


はーやだ。最悪……。


この人は笑い出すとしばらく止まらない人なんだろうか。
お腹を抱えて笑う人を見てなんとなく羨ましいと思う。



「はー……俺今日めっちゃ笑うわ。面白すぎ」

「いや笑いすぎだと思うんだけど」

「そっちが笑わしてくるからしょうがないよなあ」


不意に横目で見た彼にドキリとまた胸が高鳴る。
含みをもった笑みにもなんだか妖艶にみえて、胸がざわついた。


こんな感情はじめてで思い立ったようにその場を去ろうとすると、引き止めるように手首を掴まれて。



「帰んの?」

「……っ、うん。ちょっと思い出したことがあって」

「ふーん。だからって何も言わずに行こうとすんだ?『じゃあね』くらい言っていけよ。何事かと思うじゃん」

「う、はい……ごめんなさ、」

「謝るのクセなの?俺怒ってないし、謝ってほしくてそう言ってない。ただ帰るなら一言言ってくれたら分かるから。そんだけ」


視線がぶつかって、唇を噛んだ。

なんだか泣きそうで。


染みついてしまったその何でも謝ってしまう癖。
これは自分でも直さないといけないって分かっているけれど、どうしても抜けられない。


このことを他人に言われてしまうとは思わなくて、正直驚いた。

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