叫べ、叫べ、大きく叫べ!
3.芽生える日々
「――てかズルくない!?」
そう不満げに声をあげたのは文香で、私と皐月はそんな彼女に「まあまあ」と声を揃えて落ち着かせている。
夏休みに入ってから1週間が経った今日。
文香からメッセージが届いて3人でファミレスに集まることに。
……あ、いま舌打ちをした。
不機嫌そうに口を尖らせている彼女はいま大量に出された宿題の山を片付けている最中だ。
そんな中、私と皐月はちゅーっとドリンクを飲んでいるわけだけど。
『仕方ないよねぇ』と言わんばかりに目を合わせて困ったように笑うのは、宿題なんてものは1つも存在していないから。
ため息をつく文香には申し訳ないと思うけれど、出されてしまった事実は消えないのだから大変だろうけれど、頑張って欲しい。
「ねえーほんとズルいんだけどーっ。私も2人みたいに優雅に飲みたいっ」
「優雅って……」
「文香も飲んでんじゃん、ミルクティー」
苦笑する皐月とそれを指摘する私に文香は、さらに項垂れた。
「そういうことじゃないのよ。コレがまず要らないんだよ。コ・レ!」
顔を伏せたまま、指はドドドっと広げてある数学の問題集を刺激する。
その姿に思わずプフッと笑ってしまった。
むくりと顔だけこちらに向けた彼女は口を尖らして。
「おい、なに笑ってんだ夏澄ぃ……」
恨めしそうな声音とともに猫目がスっと細められた。