叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「ご、ごめんっ、別に変な意味で笑っ、」
「はーあっもー疲れた!私飲みもん取ってくる」
「いってら〜」
伸びをした文香はそのまま立ち上がってドリンクバーへ向かってしまった。
皐月はひらひらとその背中に向かって手を振っている。
その背中を見て『まだ言い終わってなかったのに』と戸惑い俯く。
……怒らせちゃった?私が笑ったから。
もう一度文香を見るとドリンクバー前で何を飲もうか悩んでいた。
そんな彼女にさっきの反応を思い返すとどんどん悪い方へ巡ってしまって。
話を遮られたようにも思えてきて『やばい。やってしまった』と彼女の問題集に視線を移した。
じっと見つめながら微かな冷や汗を吹き出す。
「……ちゃん、夏澄ちゃん?」
「え、あ、ん?」
「どうかした?なんか“シュン”てしてない?」
「そ、そう?」
皐月はこてんと私を覗いて、何かを探るように私に笑いかける。
ドクンと音を立てた胸と同時に皐月から視線を外して、奥にいる文香を見た。
視線を辿るようにまた皐月もそうして、「なんか楽しそう」と笑うから「そうだね」と返すと視線は再び私に戻された。
「そんな心配することないよ。大丈夫」
「え」
「アヤってさ、人が話してるのに突然思い立つ時があるんだよね。私ももうしょっちゅうされて困ってはいるんだけど、色々憎めないんだよね。なんて言うの?我が道を行くタイプなんだけどちゃんと正義感は強いし、涙脆いし、気が強そうに見えてそうでも無いからさアヤって」
ふわりと笑った皐月は、未だにドリンクバーにいる彼女を見た。私はそんな彼女の横顔を見る。