叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「……て、なんでアヤまで泣いてんの」

「いや、だって、っゔ、」

「もーっ」


困り果てた皐月は文香にティッシュを渡した。
若干文香に対して辛めなような気がして笑えてきて。



「なんか夏澄が笑ってんですけどっ、」

「わ、笑ってないっ……ふっ」

「笑ってるじゃん!」

「もーなんなのこの子たち……」


わざとらしくため息を零した皐月に私と文香はピタリとじゃれ合った手が止まって。


ほんの少し間をおいて、クスリと3人して笑う。


それからは再び文香は宿題の片付けに没頭し、私と皐月はドリンクを飲みながら文香に分からない問題を教えたりしていた。


ファミレスってこんなに長居していいものなのか。


時折不安に思ってしまうのは、滅多に来ないからでもあり、我が家では食べ終わったら休むことも無く直ぐ会計へ行ってしまうからなんだと思うわけで。


でも、それが普通だと思っている私はやっぱあまり心が落ち着かなくて。


キョロキョロ。


店内は広くて、ほとんどがファミリー層。カチャカチャと食器同士が重なり合う音があちこちから聞こえる。


子どもの声もよく聞こえて、笑っていたり、泣いていたり……そんな賑やかな空間に突然視界に入ってきたとある人物に目を大きくさせた。

< 127 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop