叫べ、叫べ、大きく叫べ!
私の様子にいち早く気付いたのは、隣の皐月。
口篭りながら指をさしてその人物を捉えた彼女は「あっ」と小さく声をあげた。
賑やかな店内なはずなのに私の耳は異常にその声だけが聞き取れて。
「3人です」なんて店員さんと交わしているその人はもう見なくても分かる。
よりによってなんでこっち側に案内をする店員さんに嫌気をさすけれど、もちろん店員さんには悪気なんてこれっぽっちも無いことは承知だ。
それでも近付いてくる声と足音に心臓は嫌なくらい大きく反応していて。
気付かれないよう精一杯顔を背ける。
窓際で良かった。あー今はこの景色が心の支え……。
皐月も分かってくれていて同じように窓の向こうを眺めていてくれている。
申し訳ないと思いつつ有り難いとも思い、窓越しに『ありがとう』と微笑んだ。
チラッと横目を見ると文香は宿題と向き合っていて、よしよしと安心しながらこのまま通り過ぎろと願う。
緊迫したのはこの瞬間だけで。
通り過ぎたことを窓越しに確認したのを機に、ふぅと2人して息をつく。
「バレなくてよかったね」
「うん」
本当に良かった。
せっかく楽しんでいるのに、ここにきてぶち壊されたらたまったもんじゃ……。
「…………め、皐月。やばいかも……」
「え、どうし……あっ」