叫べ、叫べ、大きく叫べ!
私を見て嬉しそうに立ち上がった男子が近くにいた店員さんに声をかけて何やら説明をしている。
この感じものすごく嫌な……。
「夏澄ちゃん!」
あー、終わった。もうぶち壊された。最悪……。
俯いたままでもその声を聞いただけでどんな顔してるのか分かってしまうのが本当に嫌で。
代わりにひと息ついた文香が彼の名を呼んだ。
「……あ、雅じゃん。それに剣と真守も」
「ねっここい?」
「は、やだよ」
「いいじゃん。いつメンじゃん」
「いや、ここ4人席だし無理じゃんどう見たって」
媚びる声だけど視線は私を見ているようで嫌な汗が吹き出して。
2人は私が都波のことを苦手だと知っている。だからこうやって止めようとしてくれていて。
それでもしつこく都波は「ここがいい」とせがんでくるからここはもう諦めて今度は私が2人を制した。
2人は「わかった」と眉毛を下げるけれど、そんな顔をさせてしまった私は申し訳ないと反省して「大丈夫」と笑ってみせる。
「さっき動かしていいって許可貰ってるから」
「はいはいどーぞ」
「なんで文香も皐月も嫌な顔するわけ?夏澄ちゃんなら分かるけど」
テーブルをくっつけながらサラッと2人に指摘すると透かさず都波は私の隣を確保した。
え……なんで、隣にくる……。
白目向きそうになった瞬間、皐月が声を荒らげた。