叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「解けたっ」


スッキリした表情は嬉しそうに綻んでいて、私まで嬉しくなる。


……なんだかリスみたい。


3人の中で彼は一番背が低い方。
赤みのある茶色い髪はふんわりしていて、思わず触れてしまいたくなりそうになる。

大きな瞳はキラキラしていて、綻んだ笑顔はとびきり可愛くて。


なんだか母性をくすぐられる。



「解けてよかった」

「っ、あ、うん。ありがと」

「また分からないとこあったら聞いて。数学なら教えられるから」


そう言って自分にびっくりしている。


なぜだろう。すんなり彼と話せている。笑えている。
それは彼の纏う雰囲気のせいなのか。
それともただ単に話しやすいからなのか。


いずれにしても都波よりは全然嫌な気持ちにもならなくて、ましてや糸口くんにすらそんなものは感じなくて。


本当に都波だけは私の天敵なんだなと心の底から思ってしまった。


それからはちょこちょこっと真田くんに教えてあげたり、皐月が文香のやる気の無さに困り果てている様子に笑ったり、都波と目が合ったりと、賑やかな勉強会になった。



「はー、疲れたっ。まだあと2教科もあるの辛すぎ……ねえ雅やってくんない?レポート」

「は、やだよ。俺もう終わったし」

「は、なんかウザっ。じゃー(つるぎ)やって~」

「俺もパス。てかなんでそんなあんの」

「そんなのこっちが聞きたいっつーの!」


グビっと水を飲み干しながら泣きわめくフリをした文香にみんなして『可哀想に』と眉毛を落とした。

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