叫べ、叫べ、大きく叫べ!
え……。なんで。
丁寧に復唱している人物は私に気づいているのか否かであるけれど、できれば気づいて欲しくないと思いながら逸らせずにいる。
ふとこっちを向いた彼が私を見るなり「あ」と小さく声をあげた。
ドキンと胸が高鳴って、やっと視線を外すことができた。
俯くと同時に今度は文香と皐月の声が飛び交って。
「え、なになにどうしたの!?」
「夏澄ちゃんの知り合い?」
2人は私たちを交互に見て興味津々に言う。
私は黙ったままでしかいられない代わりに、彼が言葉にする。
「夏澄とは最近だよな。あ、ご注文は以上でよろしいでしょうか」
『夏澄』と呼ばれたその反動で彼を見ては、あの時みたいに心臓が飛び跳ねて、ぎこちなく頷くと笑われたような気がした。
確認のセリフはみんなに視線を移して文香が「大丈夫でーす」なんて機嫌のいいトーンで言うから、見てみればやっぱりニヤついていた。
ああ、これは去っていったら質問攻めだろうな。
そう確信すればすぐさま女子2人が前のめり気味に聞いてくるわけで。
「ねー、夏澄あの人誰だよ~。めっちゃかっこいいじゃんっ」
「んねっ!最近知り合ったってことは同じ学校?」
「……うん。同じ学校というより私たちと同級生だよあの人」
「えっまじで!?あんなイケメンいた!?」
「イケメンかどうかよくわかんないけど……」
うんと頷けば、文香と皐月は声を揃えて「えーもっと早く会いたかったぁ」と嘆いて。
そんな彼女らをよそに、目の前の男子御三方に視線を移すと、糸口くん以外が2人を見て深く息をついていた。