叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「夏澄ちゃんの“それ”ちょーだい」
「へ?」
カルボナーラを食べていると前から声がして思わず目線を上げる。
頬杖をついている都波が私の食べているそれを指さして、くぱっと口を開けて見せた。
え、いや、何やってんの。
周り見てみなよ。文香も皐月も真田くんも糸口くんだって引いてる顔してるよ。
絡みとっている最中のカルボと口を開けている彼を交互に見ては『ありえない』と心の中で思う。
ましてやこんなことするのなんて、家族かそれ以上……。
突然ぼっと顔に火がついたように熱くなって。
水を少し口に含んだ。
「ちょっと雅、夏澄困ってんじゃん。やめてあげなよ」
「夏澄ちゃんちょーだいっ」
文香を無視した都波はなんでだろう。少し不機嫌だ。
私がこれをあげないから?
それだけの理由で不機嫌になるなんてどんだけ気が短いんだ。子どもか。
そんなことを考えながら新たなフォークを取ろうと中央にあるケースに手を伸ばすとそれを制されて、思わず声に出す。
「え、食べたいんじゃないの」
「そっちじゃなくて、こっちがいい」
「嫌だよ。だ、だって……」
それじゃ、“間接”じゃん。無理がある。私には。都波はいいかもしれないけれど。私は……っ。
「雅」
都波が私の手に触れた時、静かに呼んだ声がその手を止めた。