叫べ、叫べ、大きく叫べ!

それからは栞那と一緒に散乱したものを片付け、簡単な夕飯を施し、久しぶりの姉妹会議を行った。今回はほぼ愚痴なしだ。


話さなくなった日を埋め尽くすかのように自分の身に起こった事を共有する。
私は友達が出来たことを第一に告げ、大袈裟な歓声をあげる栞那に照れ笑った。栞那は彼氏が出来たと照れながら告げ、私は声にならない声をあげた。


よく遅く帰ってくるのは部活だと思っていたけど、それは彼氏とデートをしていたことを知ってさらにおったまげる私に笑う栞那はとても幸せそうだ。なにより彼女が綺麗になったことがなにより証拠である。


やっぱり恋をするとキレイになるって本当なんだなぁ……。



「お姉ちゃんは?」

「え、なにが?」

「好きな人とか……あ、あの茶髪の人! 文化祭一緒にいたよねっ一緒にカレー食べたよねっあの人お姉ちゃんの事ずっと見てたけど、」

「ストップ。違う。都波は違う。ただの友達だから」

「……てことは好きな人は別に居るってこと……? ね、そうなんでしょ!?」


いや、なんでそんな食い気味なんだ……こんな状況なのに。って気を紛らわせるのには十分な話題か。いやそうじゃなくて。私の話はどうでもいいんだよ。そんな好奇心的な目を向けられても困りますよ……栞那さん……。


それに、あまり思い出したくない。今は。



「好きな人は居ないよ。だからそんな目で見ないで。栞那と彼氏の話が私は聞きたいな」

「あーそーやっていつも逃げるんだからもー。間があったもん絶対居るんだからっ――あ、そういえば沖縄楽しかった? お土産もありがとう!」


コロコロと変わる表情と話題に苦笑しつつ楽しかったと告げ、たくさん撮った写真を見せながら思い出を語る。少し胸の奥を疼かせて。


一方、私が修学旅行中に栞那達も楽しんできたようで。
やっぱりなと思いつつ羨ましい反面、悔しさと切なさと嫌気をさしたのは言うまでもない。


だって朝から夢の国なんて……! ずるいにも程があるじゃん!

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