叫べ、叫べ、大きく叫べ!
自室に戻り、崩れるようにベッドに身を投げた。
うっすら瞼を閉じれば先程の光景が蘇って口角を緩める。
大人びいた栞那だけれどやっぱどこかあどけなさは健在で愛おしかった。
以前は大人びいた彼女を見て“寂しい”とは思っていたけれど、それは彼女の変化にではないと話していて分かった。
あの時はただ単に、妹に他人のような振る舞いをされて傷付いていただけだったんだと思う。そこで本当に嫌われてしまったのだと思ったくらいだから。栞那だけには誰よりも嫌われたくなかった。
だけど、今は違うと断言出来る。お互い分かり合えたから。心から安心した。
ごろりと仰向けになり天井を見つめる。真っ暗でない部屋では十分に見える波模様が目についた。
……眠たい……でも……眠れない……。
お母さんは無事だって分かったけど、私にはもう一人確認したい人がいる。
ここまで頑張って耐えていた方だと自分を称賛したい。
好きな人はいるのかを聞かれた時は自制していないと色々と溢れてきそうで危なかった。
――もう、いいよね
体の力を抜くと一瞬にして強ばった心が緩んだ。目の端から一筋伝うとそれは止まることを知らないように流れる。
やっぱり思いたくなくても嫌な方へ考えちゃうよ皐月。あんな光景を目の当たりにしちゃったんだよ。怖いよ。本当に助かるの?
心肺蘇生をしたからって無事だとは限らない。
大丈夫だって信じたいけどもしものことがあったら? 私はどう立ち直ったらいい? 千木良くんが居なくなっちゃったら私はどうすればっ。
嗚咽が止まらない。
隣の部屋には栞那がいるため声を抑えるように手を口に当てている。だから苦しい。でもその苦しさは彼に比べてみれば容易いものだ。彼は今も頑張っているかもしれない。だから泣いてなんかいられないんだよ。
「……っそんなの、わかってる、て……っ」
千木良くん、死んじゃ嫌だよ。私あなたに聞きたいこと伝えたいこと沢山あるんだよ――神様、どうか彼を助けてください。もう泣くのやめるから。だから――。