叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「栞那、お母さんは無事だから、もう大丈夫だから。ね。戻ってきたらまずちゃんと謝って、それから『ありがとう』を伝えよう。私たちがこうして生きているのはお母さんとお父さんがいるから。2人にはちゃんとありがとうを伝えよう」

「うん」

「それに、今までそんな事ちゃんと言わなかったからね。日々当たり前なことは言っても特別な日とかは全然。だからさ、私たちで手料理なんか作っちゃってさ、2人を喜ばせようよ。……もう私たちは離れちゃうかもしれないけれど」

「……っ、ひどいおねーちゃん、せっかくいいなと思ったのに最後のは、っ余計だよ、っ、はなれたくないっ」

「私だってっ」


堪らず体を180度反転させた。しくしくと泣く栞那抱きしめる。



「早く離婚すればとか言ってたのにこんなに拒否してる……ふふ、おかしいね」

「うぅぅ……」

「決めるのはお母さん達だから。仕方ないよ。……離れても私と栞那は姉妹で家族だからね……だからさ、もう泣かないで……っ」


頭を撫でるとこくんと縦に振って胸の中に擦り寄った。まるで離れまいとお願いするように。そんな彼女をまた優しく抱きしめる。微かに香る同じピーチの香りが切なく鼻奥を掠める。目を瞑ると目端から一筋こぼれ落ちた。


願うなら、せめて、昔のようにもう一度家族みんな揃って笑って食事がしたい。

それだけで充分幸せだから――。



あともうひとつ、




はやく千木良くんに会いたい……――。

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