叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「ホチキス取ってー」
「メイ、ハサミー」
「ねえ、2人とも近くにあるんだから自分で取りなさいよ……ったく……」
作業を中断して休憩にしようとキッチンからコップやお皿を持って自室へと戻ってきた私はその光景に一瞬立ち固まってしまった。
だって、私の家に友達が、いるんだもの。
はじめて我が家に人を入れたこの緊張感とわくわく感が私をさらにドキドキさせている。ほんの少し罪悪感みたいなものも混じっているけれど、全ては両親(主に母)を喜ばせるためだと思えばドキドキの方が勝ってしまう。
「みんなちょっと休憩しよう」
「うえーい!」
「ごめん、グラスとかウチ少ないから紙コップで……」
言ってて恥ずかしくなる。家には家族分しか無いことに気付いたのがついさっきで、ため息しか出なかった。
……紙コップに少し救われただけマシか。
「そんなの気にしなくていいのに。紙コップで十分だよ。ありがとう」
「そっか。あ、お茶しか持ってこなかったけど他に何か飲みたいのあったら言ってね。取ってくるから」
「うんありがとう。でも多分水分より食い気の方が欲してる気がする」
見てよと皐月が指をさす先にはバリバリ食べる文香と都波、そして真田くんがそこにいた。
ちゃんとお皿にポテチを入れて美味しそうに貪っている姿はなぜか競っているようにも見える。思わずプフと笑みが溢れると下の方で物音が聞こえた。
皐月と糸口くんも聞こえたらしく私を見る。すると下から「ただいまぁー」とやはり栞那の声が響いた。それともう1人――男の子の声も聞こえた。
「妹ちゃん?」
「うん。それと多分彼氏くんもい――」
コンコン
ガチャ
「お姉ちゃ――ッ!?」
「栞那おかえ、」
バタン
――え? なぜ閉めた?
再び開けられたのは数秒置いてからだった。