叫べ、叫べ、大きく叫べ!
母が私を呼んだ気がした。
くだらない自分の歴史に鼻で笑って眩しい世界に入る。
今日はカレーか、と思い当たり前のようにため息をつく。
機嫌が悪いんだなとまたため息する。
我が家のカレーは気分が悪い証拠の一つだ。
小さく息をついて、重い足は下へ下へと下りていく。
リビングのドアノブを捻って開けると、よりカレーの匂いが鼻についた。
「ねえ何してたの。3回も呼ばせないで」
「すみません」
より深まった不機嫌な声に、当たり前のように謝る。
あー馬鹿馬鹿しい。
やってられない。
なんで、こんな小さなことで怒るのか意味が分からない。
ほんと気分屋は嫌いだ。
カレーは好き。
なのになんでこんなに美味しく感じられないのだろう。
ルーをよそいながら思う。
「いただきます」
口に運べば辛味の効いたカレーが口全体に広がって、やっぱり好きだなって思う。
でも、美味しくない。
母は無表情だし、怖いくらいの静けさ。
食べながら早く妹の帰りを願った。
私と違ってなんでも跳ね除けるくらいの明るい妹。
その場にいるだけで私は少しだけ居心地の悪さが取り除くから。
妹が帰ってきたのは、私が部屋に戻ろうと階段に踏み入れた時だった。