叫べ、叫べ、大きく叫べ!
そこにあったものは。
私に巻きついていたものは。
「……手……――!?」
叫びそうになって慌てて口を押さえる。
ななな、なんで、なんで手が……!
やだ。怖い。
それでもまじまじと光っている手を見つめた。
光っているといってもぼんやりと白く。
たまにカメラのピントが合ったかのようにハッキリ見えるその手は大きくて、骨張っていて、綺麗だった。
この手はおそらく、“男性”。
それにしてもなぜ手が?
ふと近頃に見たあの黒い影を思い出した。
「もしかして、」
あの時のヒト?
何しに来たの?
未だに腰周りには重みを感じていて、やっぱりこの手の重さなんだと認識する。
この手っていつ消えるのかな。
……まって。えっと、手がある、ってことは……。
私の背中に何かが“いる”ってこと!?
またドクドクと嫌な音を立てる心臓。そして強ばっていく身体。
本当に怖い。
幽霊を信じないわけじゃないけど、私の後ろにソレがいたら……と思うと冷や汗が、震えが止まらない。
しばらくこの恐怖と闘ってそして、意を決して振り向いてみることにした。