叫べ、叫べ、大きく叫べ!
2.変わりゆく日々

───あれから1週間。


あの白い手はあれっきり現れることはなかった。


少し残念に思っている自分がいる。


怖かったはずなのに、あの手の温もりが未だに忘れられない。


だって優しい温度に少し癒されたから。
すっごく悲しくて、寂しくて、弱弱だった私の心をあの手が癒してくれたのは事実。


……もう一度、見たいな。



「何を見たいって?」

「うわ」


ひょこっと視界に現れた都波雅を見てしまったことで露骨に眉をひそめる。


相変わらず、ニコニコしてる憎たらしいようなその顔が眩しくて、すぐさま窓の外を眺めた。



「えーなんでそっち向いちゃうの〜。夏澄ちゃん!おはよ!」


そう言ってまた私の視界に登場してくる。


しつこいな。朝からうるさい。


じろりと彼を見上げると、にへっと嬉しそうに笑うもんだから躊躇わず意味ありげに深く息をついた。


でも、私の中では大きな変化だったりもする。


都波と話す……勝手に話しかけてくるようになってから毎日がこんな感じだ。


正直、本当に目障り。


私の大切なひとり時間だったはずなのに。


今、教室には私とこいつしかいない。


まだ8時回ったばっか。


独り占めできる私の唯一の時間だったはずなのに、なぜか都波まで一緒にこの時間を共有している。


本当になんでやつ、都波雅……。

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