叫べ、叫べ、大きく叫べ!

後ろから「照れた?照れた?」なんて声がかかるけど別にそんなんじゃない。


照れてなんかない。
こんなので照れるもんかっての。


ばかばかしくて、呆れて、だよ。


『もう話しかけてこないで』


そんな意味を込めて私はいつも通り机に伏せた。


後ろから私の背中にちょっかいを出してくるけど、無視無視。


もうすぐこの教室には人が増えてくるんだから、これ以上接触してこないで。


私はずっと1人でいたんだから。

クラスの――いや学年の人気者が、こんな根暗な奴なんかと話してるなんて知られたら、変な勘違いさせちゃうし。


私にとっても彼にとってもデメリットでしかないわけなんだから。


ほんと、いい加減ツンツンしてこないで。
ほんと、目障り。
本当にっ、やめてほしい。


寝たフリをしながら心の中では悪態をつく。


そんな風に思っていることを知らずに彼はいつまでも「ねえねえ」「本当は起きてるんでしょ?」「おーい夏澄ちゃーん」などと声を掛けてくる。


その声はいつまでも愉しそうで、
やっぱり苦手だ、と思った。



「夏澄ちゃん、本当に寝てるの?」

「…………」


ええ、寝てますとも。話すことなんてひとつもないんだからね。

もう静かにしてて──。



「……もっと笑ってる顔が見たいんだけどなぁ……って言っても直ぐにとはいかないか」





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