叫べ、叫べ、大きく叫べ!

………

……




ぼーっと高い青空を見つめる。


青く、青く、広がる空は夏本番を告げているよう。

雲だって白くてふわふわしている。それは夏特有の雲の形。


ふと流れてきた雲が犬のような形に見えて、連想したのは都波雅。


ドキンといつになく跳ね上がった。


おもむろに空から視線を外すように、身体を起こして、ヤツを頭の中から消し去る。

頭をブンブン振るけれど、ヤツはしぶとくて離れてくれない。

あの憎たらしい笑顔がいつまでも私に笑いかけてくる。


あーー!もう!
こうなったのはあの言葉のせいだ。絶対。



『もっと笑ってる顔が見たいんだけどなぁ』


そうハッキリ聞こえた。

あれは無意識に出たセリフなのか、わざと言ったセリフなのか……。

多分、後者だと思う。
だってあんなハッキリと聞こえるセリフ言う?普通。


まあ、寝ていると思って言ったんだろうけど。でも、あんなこと言うなんて思わないじゃん。


顔に手を当てるとほんのり熱くなってた。


……なにこれ。
なんかよくドラマやマンガで見るような現象に、似てる……。


いや、私は別にそんなんじゃないからっ。
都波は完全に苦手な人だし。
本当に目障りだし。うん。そう。


都波雅は私にとってなんでもないただの嫌な奴。

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