叫べ、叫べ、大きく叫べ!

今日も購買で買ったコロッケパンを食べて、ミルクティーを吸う。


怒りかなんなのか分からない、このモヤモヤした感情を消し去るようにムシャムシャ、グイグイと口に運んで流し込む。


何度目かのため息を吐く。


梯子を降りて、フェンスに近寄った私はカシャンと音を立たせてそれを握った。


網目の向こうには青空の下でいつもの街並みが見える。

何もない街。

人気も少ない。

本当に殺風景でつまらないなと思ってしまう私は相変わらずだなとほくそ笑む。


いつになったら、この景色を『綺麗だ』と思えるようになるのか。

もし誰かと一緒に見たとして、この(けしき)を『綺麗だ』と思えるのなら、誰でもいい、都波でもいいから言ってみたいな。


って、なんで都波が出てくるのよ!


もー。忘れてた頃にそうやって出てくる。



「――っ」


息を吸い込んだ口は重く閉ざされた。


何度か、この場所から大声出してみたら気持ちいいのかなって思ったことがある。


嫌な思いを捨てるように。ここから遠くへ、汚い心を丸ごと吐き捨てたらいつまで経っても消えない黒い塊はキレイさっぱり跡形もなく、消えてくれるのかなって。


やってみるなら“今”かもしれない。


そう思って、お腹に空気を入れるように思い切り息を吸ってみた。


でも、出来なかった。

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