叫べ、叫べ、大きく叫べ!
本鈴がなったと同時に先生が入ってきて、そして、私の右側から手が伸びてきた。
ギョッとしたのは束の間で、引っ込んでいった手に眉をひそめた。
そして、机の端にポツンと置かれたルーズリーフの切れ端に気づく。
え、なに。
丁寧にちぎられたルーズリーフをひっくり返すと、そこにはこれまた丁寧な字で、数字と英数字が書き込まれてあった。
〝俺の番号とIDね!登録よろしく!〟
確認した私は小さく息をつく。
いや、渡されても困るんですけど。
前にも言ったよね?
連絡することないって。
せっかく書いてくれたのに申し訳ないけど、登録なんてしないよ、私。
スクバから生徒手帳を取り出し、内ポケットにそれを入れた。
滅多に開かない手帳だからこの存在はしばらく経てば忘れてしまうかもしれない。
それでいい。
連絡帳には家族の名前しかない私のスマホなのだから。
都波は友達でもなんでもない、ただのクラスメイト兼、苦手で嫌いな人。
だから連絡先を渡されても困るんだよ。
もう一度言うけど、話すことなんて1ミリも数ミリもない。
サッとスクバにしまえば、もう無いも同然になってしまった小さく丁寧にちぎられたルーズリーフの切れ端。
『さようなら』
そう心の中で呟き、意識は授業内へと移っていった。