Dear My・・・
「だーかーら、それは全部小学生の時の話でしょう。いつまでもそんなことを覚えていないでよ。まさか彼女にも私の昔のこと、言っているんじゃないでしょうね?」

「誰が言うか、言う俺の方が恥ずかしいぞ」

 本気で恥ずかしがっているのが、その口調でわかる。
 そう、こうして彼のことを一番わかっているのは、自分だけだったはずなのに。

「でもさ、久しぶりだよな。こうやってお前と話をするのって」

「そうだね」

 いつもは彼女がいるから。

 そんな一言さえも口に出して言えない。

「だけど、久しぶりなのに話をしていても、全然違和感がないんだよな。不思議だよな」

「それはさ、ずっと会ってなかった訳じゃないからよ。話をしなくても廊下では見かけたりしていたからね」

「そうだけどさ」

 彼はそのまま口篭ってしまった。

 お互いにゆっくり話をすることもできなくなった理由に、彼は気が付いているだろうか。

 二人の間に、見えない壁があるような。

 こんなに近くにいても遠くに感じてしまう理由を。

(今はこんなに近くにいるのにね)

 いっそのこと、本当のことを言ってしまおうか。

 今まで言えなかった一言を、言ってしまおうか。

 だけど駄目だ。

 それは駄目だ。

 言ってしまった後のことを恐れている。
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