Dear My・・・
 彼の困った声が聞こえる。

 これくらいの意地悪をしてもいいだろう。

「なーんてね。冗談よ。もしかして本気にした?」

「お前なぁ。人をからかって遊ぶなよ」

 呆れて声が返ってくる。

「いいじゃない。だって・・・」

 それは幼なじみの特権だもの。

 彼女にも他の友達にも持てない特権。

 自分だけに許された唯一の。

「だって、何だよ?急に黙り込むなよ」

「あんたには秘密よ」

「ずるいなぁ。教えろよ」

「駄目」

「言わないと、自転車から振り落とすぞ」

「さっきから私はけが人だって言っているでしょう?けが人はもっと労わるものよ」

「お前は別だよ。何でそんなにけが人が元気なんだよ。おかしいじゃんよ」

「どこが元気だって?痛いのを忘れかけていたのに思い出しちゃったじゃない」

 まったく人の気も知らないで。

 そう考えていると、急に自転車にブレーキがかかった。

 何事かと彼の背中の横から顔を出した。

 ハッとする。
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