Dear My・・・
 彼の視線の先にあるのは。

 彼女の後姿。

 でも1人じゃない。

 その隣に自転車を引いて歩く男の人。

 彼の横顔は見えないけれど、明らかに動揺しているのがわかる。

 かける言葉さえ見つからない。

 そのまま前を行く二人の姿を見送るだけ。

 やがて二人は脇道へと消えていった。

 彼がゆっくりと息をついた。

「ごめん」

 ポツリと呟く声が聞こえた。

 どうして彼が謝るのかわからない。

 どんな言葉をかけてもどうにもならないことに気が付く。

「行こうか」

「うん」

 彼が再び自転車を漕ぎ始めた。

 彼の腰に捕まったまま、その背中に顔を押し付けた。

 さっきの動揺を隠すように、彼は黙ったまま。

『言うなら今だよ』

 そんな悪魔のようなささやきが聞こえてる。

 違う。

 そんなことは望んでいない。
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