time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「返信しても、しなくても、押しかけてくるから……必要ないかと思って」



「まぁ、そうだけど……返事くらいはして欲しいものなんだよね」



あたしに向かって言っている台詞なのに、どこかあたしに言ってはいないように聞こえる明美の声。



「今日も仕事だったんでしょ?」



「もちろん。明美は?」



「私も、もちろん仕事」



勝手に冷蔵庫を開け、缶ビールの蓋をプシュっと空けた明美は勢い良くビールを口の中へと流し込む。



「で、何かあったの?」



明美があたしに会いに来るときは必ず話がある時。



長年の付き合いで、人付き合いが苦手なあたしにもそれくらいはわかってきた。



「ん~秀ちゃんとのことでさ……」



「上手くいってないのか?」



「そういうわけじゃないんだけど」



缶ビールをテーブルの上に置くと、手を膝の上でモジモジとし始めた明美を見ながら、あたしは懐かしいあの頃を思い出していた。

< 10 / 398 >

この作品をシェア

pagetop