time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
だって……
浅葱と切れてしまえば、あたしの大切な札束が消えてしまうということ。
そんな大切な事を考えもしないで、苦しさから逃げたあたしは大馬鹿者だ。
取り返しの付かない過ちを犯してしまうところだった。
そうなっていれば、いくら後悔したって悔しくて悔しくて自分が許せなかったはず。
「ゆめかちゃん。ありがとう。昨日は嫌なことがあったというか……どうかしていたんだ」
まだ、不安を拭いきれていない浅葱はあたしの目を疑うような視線で見つめる。
「あたしもちょっとあったんです。苦しさを紛らわすためにあんな行動に出たことを反省してます」
軽く頭を下げるあたしの手を握り締めてきた浅葱は、やっと不安が取れたのかいつもの表情へと戻っていた。
「ゆめかちゃんは悪くないよ。そんなふうに言ってくれてありがとう。ただ一つだけ聞いて欲しいことがあるんだ」
改まって言われると身構えてしまう。
こういった話の切り出し方をするときは、たいてい良い話ではないから…――。
「僕は既婚者なんだ。隠していて申し訳ない」