time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
待っていたくせに、名前を呼んだところで笑顔すら見せてくれない豊。
仏頂面であたしを睨みつけている。
「何か用?」
鞄から鍵を取り出しながら、豊にそう問いかけた。
「話がある」
その言葉に鍵を持つ手が震えだす。
今日、浅葱に言われた言葉と同じ。
それなのに、言う人が違うだけでこんなにも動揺してしまうものなのか……
「あたしは話すことなどない」
声まで震えそうになるのを必死で堪えながら、できるだけ冷たい声を出した。
「俺があるんだ」
豊は一度言い出したら引く事を知らない。
だから、豊を拒み続けたところであたしの苦しみが増すだけだ。
3年も離れていた相手なのに、こんなことは鮮明に覚えているなんて笑ってしまいそうだ。
「じゃあ、どこか店に入ろう」
「あぁ」
鍵を鞄の中に戻し、来た道を戻り始めた。
その後ろを豊が着いて来る。