time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「この間のは店の客。あの日、豊達と入れ替わりに来た」
「そうか……」
こういうことなら答えられる。
ただ真実を話せばいいだけだから。
自分の気持ちを掘り起こす作業をしなくていい質問なら答えるつもりだ。
例え、その答えが豊に軽蔑される事であったとしても……
「ずっと今の店にいるのか?」
「今の店は1年前くらいから。それまではスナックで働いてた。そのときに知り合ったのが文ちゃん」
「古い付き合いなんだな」
「そうみたい」
豊は何のためにあたしの前に現われたの?
「今日じゃなくてもいい。お前が俺の前から消えた理由を聞かせて欲しい。もう時効だろ?」
やっぱりそのことだよね。
だから嫌だったんだ。
すべてを忘れて今の生活をしているのに、豊を見れば嫌でも思い出してしまう。
あの頃の苦しみがあふれ出して止まらない。