time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
どうせ……
また、得意先から契約を打ち切られたのだろう。
床に無造作に置かれている灰皿を右手を伸ばし引っ張った。
灰皿を近くに置いてから、煙草に火を点けると煙がスーッと体の中へと染み渡ってゆく。
少しは落ち着いたものの、瞼の裏には先程の親父の姿が焼き付いて離れない。
窓の外が少しずつ明るくなり始めたのを確認しながら、親父は家へと戻ったのかが気がかりだった。
どうしてなんだろうな……。
親父のことを呆れながらも、あんな姿を見れば胸の辺りが押し潰されそうだ。
ちっぽけだ。
親父の存在なんて……
あんな古びた工場なんて……
この世の中でちっぽけなものだ。
そして、俺の存在なんて……
価値なんてあるのかわからないほどちっぽけだな。