time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

一体何台の車を持っているんだろう?

浅葱の事なんてまるで知らないけれど、もしかしたらどこかの社長さんなのかもしれない。


高そうな車に緊張しながら、シートへ体を預けると「じゃあ、行こうか」という言葉と共に車は動き出した。


こんなふうに車からの景色を見るのも久しぶりで、懐かしさに浸っていた。


車から景色を見ることが懐かしいとばかり勘違いしていたあたしは重大な事に気づく……


「到着」


浅葱の言葉に体中の血液が薄くなった気がする。


だって、ここは……


「ゆめかちゃん。結構いいマンションだろ?きっと中を見たら気に入るはず」


マンションに文句など何もない。


あそこから抜け出せるならどんな場所だって良かった。


ただ…――


この場所に問題がある。


ここはあの頃、豊と一緒に暮らしていたアパートの隣。


懐かしく感じていたのは見覚えのある景色だったからなんだ。
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