time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「あたしのことはいいんだよ。何か用があったから来たんだろ?」



これ以上、気持ちを乱されたくなくて、話を逸らした。



「うーん。納得いかないけど、時間がないし用件だけ伝えるか」



「そうしてくれ。あたしは疲れてるから横になりたいしな」



ふてぶてしい態度を取るあたしの肩に明美はそっと手をのせた。



そして、暫くの沈黙が流れる。



「命日」


明美の言葉にあたしは首を横に振る。



もうそんな時期か。



一年が過ぎるのは早いのか遅いのかわからなくなってしまうな。



それから明美は何も言わずに帰っていった。



この言葉を伝えるときはいつもこうだった。



あたしが踏み込まれたくない場所には絶対に踏み込んでこない明美。


明美はあたしの踏み込まれたくない場所ってのがあたし以上にわかっている。


だから、きっと未だにこうして会うことができるんだろうけど……
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