time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
浅葱の言葉によって、気持ちが軽くなったあたしは重要な事を思い出す。
店で借りてくれていた、マンションの鍵……
返しに来いと言われていたのに、まだあたしの手元にある。
一週間も返しに行かないのはさすがに不味いよな…――
店に行くのは面倒くさいけど仕方ない。
あたしは重い腰を上げ、ダラダラと出かける支度を始めた。
店に行くと思うだけで、化粧が無意識に濃くなってしまう。
もうあそこで働いているわけではないのに…――
一年ちょっとしか働いていないけど、色んなことが染み付いているんだろうな。
歳をとって、いつか店で働いていた過去を消したいと思っても、きっとあたしの体が忘れさせてくれない。
記憶を消すことはできても、体に染み付いた習慣を消すことはできないから。