time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「お待たせ。お前大丈夫かよ?」
「よくわかんない。」
あたしの腕を持ち、体を支えながら宗がマンションの入り口へと歩き出す。
「ハハッ。その台詞カナっぽいな。」
「えっ?何が?」
カナっぽい……
あたしっぽい……
自分でもあたしという人間がどういう人間なのかわからないのに、宗は笑顔でこんなことを言えてしまう。
それが宗っぽいなってあたしも思っていたよ。
「何階?」
エレベーターに乗り込むと宗があたしの顔を覗き込む。
「最上階。」
それがたまらなく恥ずかしかった。
違うかな…――
見られたくなかった。
変わってしまったあたしの姿を、こんな至近距離で見て欲しくはなかった。
「すげぇ~な。この間住んでたとこも凄かったけど、ここはもっと高いんじゃないか?」
「そうかもしれない。」
あたしには前住んでいたマンションの家賃も、ここの家賃も知らない。
「入っていいのか?」
「もちろん。」
玄関の前で足を止め、部屋の中に入る事を躊躇する宗は、きっと男物の靴に気付いたのだろう。
「じゃあ、お邪魔します。」
「どうぞ。」
玄関には、浅葱の靴。
居間の至るとことに浅葱の私物が置いてある。