time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
こんな光景昔にも見た気がする。
宗の瞳から零れ落ちた涙があまりにも綺麗で、あたしは言葉を失った。
あたしにはもうあんな綺麗な涙は流せない。
いつからか、誰かを思って涙は流せなくなってしまったんだ。
「あたしは……今の生活に満足してる。幸せかはわからないけど。」
あたしの言葉にコクリコクリと頷きながら「そうか。」と言った宗の声に、胸の辺りが引きちぎられそうになる。
「体調悪いのに、いきなりごめんな。」
「あたしのほうこそ、宗のお陰で助かったし。」
宗はゆっくりと立ち上がった。
そして、悲しい目のままあたしを見下ろす。
「また来ていいか?」
「もちろん。」
あたしは宗に笑顔を見せた。
宗。
あたしは笑ってるよ。
あの店で身につけた笑顔。
さまになってるでしょ?