time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「そんなんじゃ、他の奴等に示しがつかない。」
俺が事務所に足を踏み入れるなり、親父は話を始める。
自分の机に座りながら、俺の目も見ないまま…――
「聞いてるのか?」
「あぁ。」
そんなことは言われなくてもわかってる。
「他の奴等はお前と違って、専門の学校を出てここに来ている奴らが多い。そうじゃない奴も働きながら整備の事を学べる学校に通ってる。」
「あぁ。」
それも言われなくたって知ってるよ。
俺はソファーに座ろうと思っていたのに、親父が話し続けるもんだから、座るタイミングを逃してしまった。
「みんな懸命に働いてる。それなのにお前だけを特別扱いする事はできない。息子だからってこれ以上は見逃してやる事はできない。」
見逃す?
何を見逃して、特別扱いしてるって言うんだよ?
親父はいつだって家族より仕事。
俺より、従業員じゃねぇか。
「これ以上、適当に働くならお前をここには置いておけない。」
親父の言葉に俺の中でぷっつりと何かが切れた。