time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
イライラを押し殺しながら、着替えを済ませた俺は、玄関へと向かう。


「豊?」


家を出ようとした俺に母さんが話しかけてくる。


やめてくれ。


今は何も言うな。


「仕事はどうしたの?どこか出かけるの?」


「あぁ。」


俺は返事だけをして、この場から立ち去ろうと思っていたのに……


母さんはまだ言葉を続ける。


「ご飯はどうするの?」


「うるせぇな!!餓鬼じゃねぇんだ。」


だから、やめてくれって……―


俺は何の関係もない母さんにまで怒りをぶつけ、家を飛び出した。


どうしようもできない自分の感情を振り切るようにバイクに跨る。


ブオーン


ブオーン


エンジン音だけが俺の耳には届いていた。
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