time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
まだ外は明るいけれど、そんなこと気にしていられない。


あたしは早く温もりのある場所へと行きたかった。


そうしなければ、あたしの中で何かが壊れてしまいそうで……


タクシーから降りたあたしは勢いよく店のドアを開ける。


チャリーン


風鈴の音はいつだってこんなあたしを出迎えてくれるんだ。


ドアを開けると、男の背中が視界に入った。


客がいるなんて珍しいじゃん。


そう言ってやろうと、広くはない店内に文ちゃんの姿を探したけど見当たらない。


もしかして、そこに座っているのが文ちゃん?


あたしは店内に片足を踏み入れ、足を止めた。


違う……


この背中は文ちゃんじゃない。


カウンターに座っている男がゆっくりと振り返る。


振り向かないで……―
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