time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
“カナ”とあたしの名前を呼ぶ豊の声にあたしは崩れ落ちてしまいそうだった。
切なげに呼ばれる自分の名前が、なんだかとても綺麗な言葉のような気がして。
「…久しぶりだな。」
「っそうだね。」
動揺していることを気付かれないように、冷静を装ったあたしは一つ席を空けて、豊の隣へと座った。
「文ちゃんは?」
「奥。」
顔を見なければ大丈夫。
目を合わさなければ、いつものあたしでいられるはず。
「文ちゃーん。喉渇いた!!」
あたしは仮面を装着し、奥にいる文ちゃんに声をかけた。
「カナか。」
そう言いながらあたしの前に現われた文ちゃんは、一瞬豊に視線を向けた。
文ちゃんの視線につられる様にあたしも豊の手元へと視線を移してしまう。