time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
きっと、あたし達の気まずい空気を文ちゃんは感じ取っている。


それでも、知らない振りをしてくれる文ちゃんは本当に有難い。


この場に文ちゃんがいなければ……


あたしは……―



「カナは野良猫みたいだな。」


「はっ?あたしが?何で?」


文ちゃんはあたしの前に豊と同じ飲み物を置き、笑顔で話しかけてくれる。


豊もこの酒が好きなのかな?


あたしがこの酒を好きだって知っている?



「ふら~っと現れるから。」


「そう?」


「あぁ。カナの気まぐれで俺は店を開けなきゃいけないのかな?ってたまに思ったりする。」


こんな冗談も今は助かるよ。


「何言ってんの?あたし以外に本当に客がいないわけ?」


段々と調子を取り戻してきている自分にあたしはホッとする。
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