time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「座れよ。」


文ちゃんに置いていかれてしまったあたしはドアの向こうを呆然と眺めていた。


すると、背中に豊のそっけない声が聞こえる。


「あ、あたし帰ろうかな?」


「この店はどうすんだ?」


「豊がいればいいんじゃない?」


あたしは豊に背中を向けたまま、言葉を返す。


2人きりというこの空間で、どうしていいのかわからず頭の中は混乱している。

「そんなに嫌か?」


「……嫌なわけではない。」


本当に嫌なわけではない。


でも、昔のあたしだったら……


絶対に“嫌に決まってんだろ”と言っていたはずなのに。
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