time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「カナ。悪かったな。」


「ホントだよ。文ちゃんの大切な店だろ?」


カウンターの中へと入った文ちゃんは、苦笑いをしながら、あたしと豊の前に小さな白い袋を置いた。


あたしは文ちゃんの目を見ながら、少しだけ首を傾けた。


「たい焼き。懐かしくて買っちまったよ。」


「食べていいの?」


「あぁ。店番させたお礼だ。」


あたしはたい焼きの入った袋を手にした。


袋ごしに伝わってくる温かさがなんだか心地よかった。


たい焼きが冷めないように、急いで帰って来た文ちゃんを想像すると手だけじゃなく、心の中まで温かくなってくる。


「いただきまーす。」


あたしの声に「いただきます。」と豊が続き、文ちゃんもたい焼きを口にした。


「懐かしいな~。小さい頃よく食べたんだ。」


目を細めながら、たい焼きを頬張る文ちゃんの表情は見たことがないくらい、穏やかだった。


「へぇ~そうなんだ。あたしは今日で2、3回目だと思う。」


「俺もあんまり食べたことねぇな。」


「そうだよね!!文ちゃんは何でそんなに食べる機会があったわけ?」


3人でたい焼きを食べながら、こんなふうに話をしていると何故か高校時代を思い出してしまう。
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