time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

こうして豊と並んで歩くだけで、あたしはどうしようもない悲しみに襲われる。


あたしは豊の隣で幸せなんて感じちゃいけない。


でも、今日だけは……


豊に行く場所が見つかるまででいい。


その間だけ、この幸せを許してください。



「本当に行っていいんだよな?」



前を真っ直ぐに見つめる豊は相変わらずの口調。


小学校のお遊戯会で台詞を棒読みに読む男の子のようだ。


「いいよ。」


「サンキュ。で、家は?」


あたしに質問をしているはずなのに、豊は空なんか見上げてるから、あたしもつられて空を見上げた。


何もかもが不平等で理不尽な世の中で、あんたと見上げる空だけは綺麗に見える気がした。


それは3年の月日が経っても変わらなかった。
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