time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
どちらかといえば冷たくするのは、いつもあたしのほうなのに、何だかしっくり来ない。
でも、あたしにはもう明美の所しかないわけだから……
明美の家へと向かって足を進めた。
ただ一人でボーっと歩いていると、頭の中は余計な事を考えてしまう。
豊に吐き出してしまったあたしの想い。
言葉にしてしまえば、その想いがあふれ出し、涙と変わってしまう。
言うつもりなんてなかったのに…――
涙を拭い、深呼吸をしてから空を見上げる。
静香?
豊が言うようにあたしは間違っているのかな?
あんたが煙となったあの日、あたしは金を手にするってあんたに誓ったよね。
そう…――
火葬場の煙突から静香が空に上っていくのを見つめながら、あたしは思った。
もう大切な人を失いたくはない。
二度と大切な人の煙は見たくないと。
そのためには、金が必要だったんだ。
金さえあれば静香だって、今あたしに笑いかけていてくれたかもしれないのに。