time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
明美は泣き始めてから数分もたたないうちに、寝息をかきはじめた。


「コイツ、泣きながら寝てるし。」


小声で、そう囁く秀の瞳は優しいんだけど、闇のなかに引き込まれてしまいそうな冷たさを含んでいるように感じた。


「帰る。明美が起きたら礼を言っといてくれ。」


「あぁ。」


明美が言うように懐かしい光景が目の前で繰り広げられている。


これは夢なんじゃないかって思ってしまうくらい、あたしの体はフワフワとしていた。


「秀、またね。」


「おう。いつでも来い。」


「ありがとう。」


あたしは秀にお礼を言った後、足早に豊の背中を追い掛けた。


昔から、いつだってあたしの前を行く豊の背中を追い掛けた。
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