time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

マンションを出ると、スタスタと前を歩いて行ってしまう豊。


薄暗い外灯が等間隔で並べられている道で、段々と豊の背中が小さくなって行く。


「豊!待てよ。」


あたしは追い掛けていた足を止め、大声で豊を呼んだ。


豊はピタリと歩くのをやめ、ゆっくりとあたしの方へと振り向いた。


そして、左手をあたしに向かって差出し「さっさと来い。」と文句なんか言ってやがる。


あたしは溢れだす笑みを堪え、豊の左手に向かって走りだした。


静香……


あたしはこの無愛想で口が悪い男がやっぱり好きなんだ。


どうしても必要なんだ。


豊の手に自分の右手を重ねた瞬間に豊の体温があたしの涙腺をゆるめてしまう。


「泣くなら帰ってからにしろ。さっさと帰るぞ。」


「誰が泣くかよ。」


憎まれ口をたたきながらも、あたし達の手はしっかりと握られている。


もう離さない。


豊。


もう離さないで。
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