time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
「前の店の店長さん?あの人に聞いたら何でも教えてくれて。だから、僕の荷物を引き払うよ。2人で好きに使ってくれ。」


帰ろうとしているのか、立ち上がった浅葱の腕をあたしは思い切り掴んだ。



「待ってください!!そんなことできない。」



「僕の事を少しでも大切に思っていてくれたのなら、僕の言うとおりにして欲しい。」


理解できない……


浅葱…――理解できないよ。



店に金を払ってまであたしを独占したかと思えば、こんな簡単にあたしを手放すのかよ?



しかも、浅葱以外の男と暮らす場所までも提供して……



「ゆめかちゃん。幸せになるんだよ。僕の荷物は明日にでも引き取りに来させるから。」


浅葱は最後にあたしの頬を優しく摩り、部屋を出て行った。



この時の悲しい瞳が、孤独な背中が、あたしが見た浅葱の最後の姿だった。
< 274 / 398 >

この作品をシェア

pagetop