time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
あたしは浅葱を追いかけることも、浅葱の背中から目を逸らすこともできないでいた。
ただ、ボーっと先を見つめるだけ。
そこにはもう浅葱の背中はないはずなのに、あたしの瞳には少しだけ丸まった背中がうつっていた。
始めから終わりまで、あたしは浅葱を理解することはできなかった。
浅葱が何を感じ、何を考えていたのか、ただの一つもわかっていないと思う。
もう少し、真剣に向き合うべきだったのだろうか?
あたしの目に写る浅葱は結局の所、“金”でしかなかったんだよな。
目的は金だった。
それでも、途方にくれていたあたしを導いてくれたのは浅葱だったような気がする。
今も明日も見えなくなってしまったあたしに、生きる力を与えてくれたのは浅葱だったんではないだろうか?
浅葱が去った今、そんなことを感じ始めているあたしは本当に自分のことしか考えずに生きているのだろう…――