time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
ビールを何杯飲んだのか覚えていないくらい、体の中にアルコールを流し込んでいるはずなのに、あたしの頭は冴えていくばかりでちっとも酔えなかった。




「気が向いたら顔でも出して来い。」



そう言いながら、テーブルに紙切れをのせた豊は立ち上がり、「ベッド借りるぞ。」と言って居間から姿を消した。



あたしは紙切れを手にすることもなく、ずっと足元を見つめていた。



豊は酔っていたのかな?



いつもより少しお喋りになっていた気がする。



それとも会わなかった年月が豊をお喋りにしたのだろうか?



急すぎる…――。



3年間も遠ざけていたものが、一瞬にして目の前に並べられても、あたしはどれから手をつけていいのか、どんな風に掬い上げればいいのかわからない。



わからなくて涙が出そうだ。
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