time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
今、あたしが向かっている先は“EDUTILOS”。
浅葱を探す手段は、もう文ちゃんしかいない。
久しぶりに足を踏み入れたネオン街は、まったく変わらない。
煌びやかな街の風景とは裏腹に、寂しい背中ばかりが通り過ぎる。
この街に出入りする人達は心からの笑顔を失ってしまったのかもしれない。
街に出入りしたから、失ったのか……
失ったから出入りするようになったのか……
それはわからないけど。
“EDUTILOS”のドアには営業中のプレートがあった。
ホッとしてドアを開けると、心地よい音が鳴り響く。
「いらっしゃい。久しぶりだな。」
「相変わらず誰もいないし。」
私も文ちゃんも、いつもと同じ台詞を交わす。
「飲むか?」
「そうだね。いつもの。」
定位置に着くと、すぐ様あたしの前に置かれるカクテル。
「いただきます。」
あたしは話を切り出す前に、グラスを一気に空にした。